整骨院開業は儲からない?収支と経営指標をわかりやすく解説
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中澤 寛
大学卒業後、独立して代理店営業をしながらスポーツスクールを5団体まで立ち上げ。その後、スポーツスクール立ち上げの経験を活かしてウェブ集客支援の受託事業を開始。延べ10年で90社のホームページ制作、ランディングページ制作などのクリエイティブからリスティング・PPC広告運用、SEOの支援を行う。
整骨院の経営が厳しい・開業しても儲からないと言われる5つの理由
整骨院経営が厳しいと言われる主な理由は、店舗数の飽和による競争激化、開業後の資金繰りと運営体制の難しさ、保険請求審査の厳格化、大手チェーンとの集客力格差、好立地物件の確保難という5つです。整骨院の経営が厳しい、儲からないと耳にする機会が増えている背景には、こうした複数の要因が重なっています。
理由①:商圏によっては競合施術所が多い
厚生労働省の衛生行政報告例によると、柔道整復の施術所数は令和6年時点で全国50,924か所です。開業予定地では、周辺の施術所数や人口、提供メニューを個別に調査することが重要です。
競合院が多い商圏では、顧客の選択肢が増えるため、他院との差別化が経営上の課題になりやすくなります。
理由②:開業後の資金繰りと運営体制
整骨院業界では新規開業と廃業がともに起きていますが、少なくとも本記事で参照する令和6年衛生行政報告例では、新規開業数と廃業数の内訳は示されていません。開業後の資金繰りや運営体制は事業継続に関わるため、開業前に運転資金と固定費を具体的に試算する必要があります。
開業前に十分な運転資金と経営体制を整えておくことが、経営を維持するうえでの課題です。
理由③:療養費請求には支給・算定基準への対応が必要
整骨院の収入源となる柔道整復療養費については、厚生労働省が長期・多部位・頻回施術に関する調査や患者照会など、適正化の取り組みを継続しており、支給対象や算定基準に沿った運用が求められています。
打撲・捻挫の施術が3か月を超える場合など、所定の条件では長期施術継続理由書の添付が必要になるなど細かい基準が設定されており、正確な記録と運用が欠かせません。
理由④:広告予算や運営規模に差がある
広告予算や運営規模が異なる整骨院チェーンが存在する商圏では、個人経営の整骨院が同水準の広告費を投じることは難しい場合があります。自院の対象顧客や強みを明確にし、差別化を図ることが重要です。
理由⑤:物件条件と固定費の両立が必要
整骨院の集客には立地が重要ですが、商圏内で条件の良い物件を確保できるとは限らず、賃料や取得コストは物件ごとに異なります。商圏調査と固定費を併せて比較検討する必要があります。
立地選びで妥協した場合は、集客施策でカバーする計画も併せて検討することが重要です。
儲からない整骨院に共通する5つの特徴
整骨院の収益性を検討するうえで確認しておきたいのが、商圏調査をせず立地を決めていないか、競合との差別化ができているか、柔道整復療養費の対象施術だけに収益を依存していないか、新規集客の導線があるか、データを見て経営判断しているか、という5つの視点です。自院がいくつ当てはまるか確認してみましょう。
特徴①:商圏調査をせず立地・コンセプトを決めている
「駅から近いから」「家賃が安いから」といった理由だけで立地を決めると、想定していたターゲット層とのずれが生じる可能性があります。開業前に周辺の年齢層・世帯構成・競合の有無を確認し、誰に来てほしいかを先に決めてから物件を選ぶことをおすすめします。
特徴②:競合との差別化ができていない
近隣の整骨院と同じ施術内容・同じ料金設定のままでは、価格以外で選ばれる理由がありません。得意な症状、対応時間、接客の方針など、他院と比較されたときに選ばれる要素を明確にしておく必要があります。
特徴③:保険診療だけに収益を依存している
柔道整復療養費の適正化が進む中、対象施術の収入だけに依存すると収益が変動しやすくなる可能性があります。必要な資格・法令上の範囲を確認したうえで、自費施術を収益源の一つとして検討することも選択肢です。
特徴④:新規集客の仕組みを持っていない
ホームページやGoogleビジネスプロフィールは、新規患者に院の情報を届ける経路として検討できます。口コミや紹介だけに頼らず、開業前から集客経路を複数用意しておくことが望ましいです。
特徴⑤:データを見ずに感覚で経営判断している
次回予約率・リピート率・紹介率・顧客獲得単価といった数値を記録すると、課題の所在や施策前後の変化を確認しやすくなります。感覚だけに頼らず、日々の数字を記録する習慣が経営判断の助けになります。
整骨院の月次収支を確認する計算例
以下は、売上と支出の関係を確認するための仮想的な月次収支の計算例です。実在する整骨院の実績や利益を示すものではなく、院長報酬・税・借入返済なども含みません。自院の実数を当てはめて資金計画を確認してください。
整骨院開業に必要な資金の目安
整骨院の開業には、物件取得費・内装工事費・施術ベッドなどの設備費・運転資金など複数の費目がかかります。金額は物件条件、地域、内装のグレード、開業形態(テナント開業/自宅サロン)によって大きく変動するため、複数の見積もりを比較し、開業後数ヶ月分の運転資金まで確保したうえで資金計画を立てることが重要です。
計算例は、院長1名・アルバイト1名の小規模な運営体制を想定しています。
| ケースA | ケースB | ||
| 売上 | 店舗 | 693,900円 | 886,100円 |
| 出張 | 164,500円 | 20,000円 | |
| 支出 | 固定費 | 442,419円 | 415,849円 |
| 変動費 | 91,260円 | 85,433円 | |
| 収支 | 324,721円 | 404,818円 |
この計算例では、ケースA・Bともに掲載費目の差引額が30万円を超えますが、実際の利益を判断するには、院長報酬・税・借入返済など自院に必要な費目も加えて計算する必要があります。
収支を継続的に確認するために管理したいデータを4つ紹介します。
整骨院の開業を成功させる4つのポイント
当院が目標例として管理しているのは、次回予約率90%・リピート率80%・紹介率30%・顧客獲得単価(CPO)1万円以内という4つの指標です(自社の目標値であり、業界標準を示すものではありません)。自院の状況に合わせて目標値を検証しながら管理することをおすすめします。
柔道整復療養費の対象施術に頼りきらず、必要な資格・法令上の範囲を確認したうえで自費施術メニューを取り入れることも、収益を分散させる選択肢の一つです。
ポイント①:次回予約率を90%
この記事では、当日施術を受けた人のうち、施術終了時に次回予約を入れた人の割合を次回予約率とします。重要なのは仮でよいので日程を切ることで、「次回の予約はされていきますか?」と一声かけるだけで実践できます。
この声かけの有無によってリピート率が変わる可能性があるため、自院のデータで効果を確認しながら取り入れてみましょう。
ポイント②:リピート率を80%にする
次回予約率90%を目指すのと同様に、リピート率80%を目標にしましょう。リピート率が低い場合は、技術だけでなく接客も確認したい要素の一つです。
整骨院の口コミには、接客に関する指摘が含まれる場合があります。自院の口コミに接客面の指摘がないか確認し、リピート率が80%を下回っている場合は接客面も見直してみましょう。
ポイント③:紹介率を30%にする
この記事では、対象期間の新規来店者数に占める紹介経由来店者数の割合を紹介率とし、30%を目標にしましょう。紹介経由の来店数と売上を自院で計測しながら伸ばしていくことが重要です。
紹介率を上げるための取り組みとして、院内で検証できる施策例を3つ紹介します。
- ビジョン・哲学を語る
- 期待を超えた接客体験を提供する
- 紹介依頼をする
特に重要なのがプライドを捨てて紹介を依頼することです。専門家であればあるほど「お願い」することに抵抗を感じがちですが、お願いしないと紹介率の改善は進みません。
プライドを捨てて、頭を下げて紹介のお願いをしましょう。
ポイント④:顧客獲得単価(CPO)が10,000円以内で新規10人を目指す
この記事では、対象期間の集客費用を新規来店者数で割った値を顧客獲得単価(CPO)とします。投資判断では、このCPOを顧客生涯粗利と比較しながら、自院のデータで採算を試算してみましょう。
広告費控除後の売上差額がプラスになるかを目安に、CPOの上限を自院の粗利構造に合わせて設定することをおすすめします。
今後の整骨院経営に必要な3つの思考
整骨院経営を安定させるには、感覚ではなくデータに基づいて判断する「データ思考」、集客単価と売上を数字で管理する「マーケティング思考」、技術よりも接客の質を重視する「サービス思考」という3つの思考が欠かせません。
考え方①:データ思考を取り入れる
分析をおこなう際は必ずデータをもとに取り組みましょう。数値を記録すると、判断根拠や施策前後の変化を確認しやすくなります。
日々のお客様の細かいデータを記録することが、感覚的な判断を避けるための土台になります。取得を検討できるデータ例は以下の通りです。
- お客様情報
- お客様1人当たりの年間売上(LTV)
- お客様の流入経路(チャネル)
- 流入経路別のお客様獲得単価(CPO)
- リピート率(2ヶ月以内の来店)
経営の意思決定をする際は必ずデータをもとにおこないましょう。
考え方②:マーケティング思考を取り入れる
商売の基本は「安く仕入れて高く売る」であり、整骨院でいえば、いかに安価な金額でお客様を獲得し、リピート率や紹介率などお客様一人あたりの売上を増やす施策を行えるかが重要です。施策別の顧客獲得数や費用を計測すると、継続判断に活用できます。
集客の取り組みごとに、お客様の獲得単価と売上への貢献を数字で確認し、加速・継続・停止のいずれかを正しく判断することが、マーケティング思考として重要です。
考え方③:サービス思考を取り入れる
「技術があれば集客ができて売上が増えて経営がうまくいく」と考えがちですが、施術内容に加えて説明や応対も顧客体験を構成する要素です。
整骨院はサービス業であり、技術が「あって当たり前」とされる中で、口コミには接客に関する意見が含まれる場合があります。自院では技術面に加え、説明や応対についても利用者の意見を収集してみましょう。
【まとめ】数値を確認しながら経営改善を進める
計算例の収支差額は利益そのものではありません。実際の収支は商圏、単価、患者数、費用構造等によって異なるため、自院の費目を漏れなく計上し、指標を継続的に確認することが重要です。
経営者目線で整骨院を運営し、商圏、患者数、単価、固定費を具体的に試算しながら、各指標を計測して改善を続けることが重要です。1つずつで良いので、今日から取り組んでみてください。
